映画「新仁義なき戦い 組長の首」は、「仁義なき戦い」五部作に続く新シリーズとして始動した「新仁義なき戦い」三部作の二作目にあたる作品で、1975年に公開されました。
前作にあたる「新仁義なき戦い」が「仁義なき戦い」のセルフリメイクともいうべき内容であったのに対し、本作「新仁義なき戦い 組長の首」のストーリーは完全なフィクションであり、「仁義なき戦い」シリーズ初の実録路線外の作品です。
前作を含む「仁義なき戦い」シリーズとはストーリー上の繋がりが一切ないため、シリーズ作品を未見の方でも楽しめる独立した作品に仕上がっています。
この記事では「新仁義なき戦い 組長の首」の詳細なあらすじと主要登場人物の設定について解説していきます。
「新仁義なき戦い 組長の首」あらすじを丁寧に解説
ここでは映画「新仁義なき戦い」のあらすじを、ネタバレを含めて結末までわかりやすく解説していきます。
懲役七年
北九州市では違法薬物の取引をめぐって大和田組と共栄会が対立を続けていた。大和田組幹部・楠鉄弥は大和田組の勢力を拡大させるため、兄弟分である旅のヤクザ・黒田修次と共に共栄会々長・正木巌の襲撃を計画する。黒田は出所後の報酬と引き換えに楠に代わって正木を射殺し、殺人罪で七年の懲役を課される。
長い懲役を終えて出所した黒田を待っていたのは、獄中で世話をした志村勝男と志村を慕う子分の笹木茂、そして覚せい剤で身を持ち崩した楠だった。楠は大和田組々長・大和田徳次に黒田に500万円を渡すよう要求するが、大和田は楠の素行の悪さを理由にそれを断る。
さらに大和田組の内部では、同組幹部・赤松猛夫が独立を主張して同組若頭・相原重彦ら幹部と対立していた。
相原の謀略
500万円に執着する黒田が、金がないのなら楠の妻・美沙子の経営する飲み屋を渡せと楠に迫ると、業を煮やした楠は黒田を連れて大和田とその情婦を襲撃・拉致して、黒田に500万円の支払いを確約させる。
大和田は相原に500万円を肩代わりさせるが、相原は持ち合わせがないことを理由に支払いを引き伸ばし、当座の資金としておよそ50万円相当の覚せい剤を黒田に手渡す。黒田は赤松に覚せい剤の買取を要求するが、相原と確執のある赤松は覚せい剤の出処を知って激怒し、黒田に街を出ていくよう通告する。
自力で覚せい剤をさばいていた志村と笹木は赤松組に襲撃され、覚せい剤を強奪される。笹木は現状における全財産である覚せい剤を奪い返すため、単身で赤松組に乗り込んで赤松を刺殺するが、赤松組の組員に反撃され自身も刺殺されてしまう。
跡目騒動
大和田組の幹部会で相原は赤松の殺害が自身の謀略であることを告白し、幹部らの見守るなか黒田に500万円を手渡す。さらに相原は黒田に街からの退去を要求するが、黒田がこれを拒否すると、黒田は大和田組の客分に迎え入れられる。
赤松の情婦・綾と内通していた相原は、赤松の死を機に綾を自身の情婦として新たなキャバレーをオープンし、オープンセレモニーに大和田の兄貴分である野崎組々長・野崎浅次郎を招待する。相原を寵愛する野崎は、相原を二代目に据えて引退することを大和田に勧める。
独断で赤松を粛清した相原を疎んじた大和田は古参の幹部・井関政治を二代目組長に指名し、黒田と親子の盃を交わす。さらに大和田は黒田と井関に兄弟分の盃を結ばせて井関体制の強化を図る。
内部紛争
井関の二代目襲名に納得のいない相原は、覚せい剤中毒に苦しむ楠を利用して大和田と黒田を襲撃させる。覚せい剤欲しさ凶行に及んだ楠は自身の妻・美沙子の面前で大和田を射殺し、精神病院に収容される。
相原は野崎を同席させて幹部会を開き、井関から二代目組長の座を奪い取る。相原に黒田の排除を命じられた井関は黒田を説得して街から追い出そうとするが、黒田はこれを拒否。黒田は相原から二代目組長の座を奪還して、井関を組長に据えると宣言する。黒田は自身の舎弟である志村と、楠の舎弟分・須川国光と共に、二代目組長就任の挨拶回りをする相原を襲撃する計画を立てる。
組長の首
黒田は渋滞に巻き込まれていた相原を襲撃するも失敗。さらに道中で広島・森本組に応援を依頼するなど警戒を強めた大和田組の罠にはまり、須川が重傷を負う。後日、大和田組は黒田が逮捕されたことを知って警戒を解くが、逮捕されたのは黒田ではなく、黒田の名を騙る須川だった。
志村はキャバレーで談笑する相原を射殺するが、赤松を襲撃した笹木と同じように大和田組の護衛に反撃され、射殺されてしまう。
襲撃の様子を隠れて見守っていた黒田は、病院で幹部らと共に相原の死を悼む井関に電話をかけ、井関に次期組長就任の準備に取り掛かるよう促す。井関は無事に大和田組々長を襲名し、黒田は井関の兄弟分として襲名式に出席する。
「新仁義なき戦い 組長の首」登場人物
「新仁義なき戦い 組長の首」は登場人物が多く、その利害関係も入り組んでいるため一見しただけで相関関係を理解することは難しいかもしれません。
ここでは「新仁義なき戦い 組長の首」の主要な登場人物についてご紹介していきます。
黒田修次(菅原文太)
流れのヤクザで本作の主人公。大和田組幹部・楠鉄弥と共に大和田組の対立組織である共栄会々長・正木巌を射殺し、7年の懲役を課される。獄中で暴行を受けようとしていた志村勝男を助け、志村を慕う笹木茂ともども舎弟にするなど情に厚く面倒見も良いが、一方で金のためなら手段を選ばない非情な一面を持ち併せている。
志村勝男(小林稔侍)
獄中で強姦されかけているところを助けられたことをきっかけに黒田の舎弟となる。黒田が大和田組を敵にまわしても文句ひとつ言わずに黒田を慕う忠実な子分。己の命を顧みずに二代目大和田組々長・相原重彦を襲撃・射殺するも、ボディガードたちに銃弾を浴びせられて絶命する。
笹木茂(三上寛)
兄貴分である志村を追って黒田の舎弟分となる。映画スターに憧れてギター一本を抱えて家を飛び出るが、相原の絵図に乗せられて赤松組々長・赤松猛夫と刺し違え、無残な最期を遂げる。志村と出会った頃には既に小林旭という偽名を名乗っていたため、遺体を引取りに来た母親に聞くまで黒田と志村は笹木の本名を知らなかった。演者の本職がフォークシンガーなだけあって、ギターの腕前は一級品。
大和田徳次(西村晃)
大和田組々長。大組織の組長らしからぬ尻の穴の小さな人物。引退を決意するも赤松を謀殺して勢力を上げた相原を疎んじて、うだつの上がらない幹部・井関政治を跡目に指名し、内部抗争の火種をつくった。娘の亭主である楠のポン中に頭を悩ませており、自身の引退を機に楠との離縁を促すなど娘思いの一面も。引退を決めて間もなく、相原と手を組んだ楠に射殺される。
楠鉄弥(山崎努)
大和田組幹部で黒田の兄弟分。大和田組長の娘・美沙子の亭主であることを笠に着て、出所後の報酬金を餌に黒田に懲役を肩代わりさせるが、覚せい剤で身を持ち崩して文無しとなる。大和田を情婦ごと拉致して力尽くで金を巻き上げるなど黒田にも劣らない狂犬ぶりを発揮するも、最後には相原に利用され、精神病院送りとなる。
楠美沙子(梶芽衣子)
大和田徳次の娘で楠鉄弥の妻。鉄弥をよく思わない徳次との板挟みに苦悩しながらも、覚せい剤中毒の夫に暴力を振るわれてもなお愛情を注ぎ続ける良き妻。献身的な介助もむなしく、夫が父を殺害するという最悪の結末を迎えてしまう。悲劇のヒロインと呼ぶに相応しい薄幸な人物で、ある意味では本作で最大の被害者。
須川国光(渡瀬恒彦)
楠の舎弟分。共栄会々長襲撃の運転手を務める。楠と同様に懲役を務めた黒田に恩義を感じており、楠が精神病院に収容された後には黒田の腹心となって共に相原を襲撃する。警察に逮捕されるが、苛烈な取り調べに屈せず黒田の名を騙り通して二代目大和田組の油断を誘い、相原襲撃の成功に大きく貢献する。
相原重彦(成田三樹夫)
大和田組若頭。目的のためなら手段を選ばない非情な男。意見が対立した同組幹部・赤松猛夫と、同組幹部・井関を跡目に指名した大和田を謀殺して二代目大和田組々長の座を手に入れる。黒田と兄弟分の盃を交わした井関に黒田殺しを命じるが、暴走した黒田に逆に命を狙われ、二代目を襲名するも間もなく射殺されてしまう。
赤松猛夫(室田日出男)
大和田組系赤松組々長。管理売春と覚せい剤の売買で大きな収益を上げており、上納金を惜しんで大和田組からの独立を目論むが、縄張りを狙った相原に情婦である綾を寝取られた挙句に謀殺されてしまう。赤松の死は、綾の「下がりボンボ」伝説を強く裏づけることとなった。声も体も大きく、本作でもっともヤクザ然としたキャラクター。
井関政治(織本順吉)
大和田組幹部。盃の格では相原より上であるにもかかわらず、いまいちうだつの上がらない人物。一度は次期組長の候補となるが、大和田を謀殺した相原が二代目組長に就任することが決まると安堵の表情を見せる小心者。大和田の命令で黒田と兄弟分の盃を交わすが、黒田を御しきれず内部紛争を激化させた。
綾(ひし美ゆり子)
赤松の情婦でありながら相原と内通する多情の女。夫を立て続けに亡くしていることから「下がりボンボ」と呼ばれている。相原は縁起を担いで綾を後ろからしか抱かなかったにもかかわらず結局は死亡してしまった。赤松と相原の死で「下がりボンボ」伝説はいよいよ信ぴょう性を高めるが、そもそもヤクザに早死にする者が多いだけのような気がしないでもない。
野崎浅次郎(内田朝雄)
野崎組々長で大和田の兄貴分。大和田に引退を促し、大和田亡き後の二代目組長の人選にも口出しするなど大きな影響力をもつ人物。相原になにかと目をかけており、相原襲撃の席に居合わせるも無事に生き延びた。
「新仁義なき戦い 組長の首」ネタバレ結末
ポイント
- 五部作に続く新シリーズの二作目。
- 本作は「仁義なき戦い」シリーズ初の実録路線外作品
- 実態は「仁義なき戦い」の製作陣によるアクションエンタテインメント
「新仁義なき戦い 組長の首」は前作「新仁義なき戦い」に続く、「新仁義なき戦い」三部作の二作目にあたる作品です。
これまでのシリーズ作品がすべて実際の抗争事件を題材にした実録映画であるのに対し、本作は実話に基づかない完全オリジナルストーリーであるため、実録路線で培った非情なリアリズムとフィクションのもつエンタテインメント性がより高い次元で一体となっており、新シリーズの名に相応しいアクションエンタテインメント作品に仕上がっています。
前作「新仁義なき戦い」とはストーリー上の繋がりのない独立した作品なので、ぜひ肩の力を抜いて気楽にご覧になってください。
次回のあらすじはこちら↓
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