仁義なき戦い

【仁義なき戦い 広島死闘篇】ネタバレ結末!あらすじ・登場人物まで徹底解説

映画「仁義なき戦い 広島死闘篇」は、「仁義なき戦い」の続編として、監督・深作欣二、脚本・笠原和夫、主演・北大路欣也というキャストで製作され、1973年に公開された実録映画です。本作は前作の撮影中に早くも製作が決定し、第一作の公開からわずか4ヶ月足らずという驚異的なスピードで公開に至りました。

「仁義なき戦い 広島死闘篇」では前作から引き続いて広島抗争の内情を描いていますが、群像劇だった一作目に対し、本作は「殺人鬼」との異名をとって広島ヤクザたちから畏怖された山上光治(作中では山中正治)氏の壮絶な生き様を描いたドラマとなっており、シリーズの中では番外編的な色合いの強い作品であるといえます。

ここでは「仁義なき戦い 広島死闘篇」の詳細なあらすじと主要登場人物の設定についてご説明していきます。

「仁義なき戦い 広島死闘篇」あらすじを丁寧に解説

広島の闇市

予科練に志願するも年齢が及ばず希望が叶わなかった山中正治は村岡組々長・村岡常夫の姪である上原靖子が闇市に経営する飲食店で無銭飲食を働き、大友連合会々長・大友長次の実子である大友勝利らのリンチに遭う。

見るに見かねた靖子に助けられ手当を受けた山中は、村岡に頼みこんで村岡組の若衆となる。しかし未亡人である靖子と男女の仲になったことで山中は村岡の怒りを買い、村岡組幹部・高梨国松の計らいにより九州へ逃れる。

滞在先の組の意向を組んで敵対する組長を射殺すると山中の名は密かに評判となる。広島に呼び戻された山中は村岡と正式に親子盃を交わし、靖子との関係も村岡の公認するところとなる。

博徒大友組

一方、大友勝利率いる愚連隊は村岡組が握る競艇場の利権を奪うべく、競艇場のトイレを爆破するなど妨害工作を実行するが、テキヤ大友連合会々長・大友長次が競艇場の利権は博徒である村岡組のシノギに相応しいと主張し、無軌道に暴れまわる勝利を破門する。

大友連合会を破門された勝利は広島の長老・景浦辰次郎親分の舎弟である時森勘市の暖簾を継ぎ、博徒大友組を結成する。賭場を開帳するなど村岡組の縄張りを荒らしていた大友組はついに村岡に対する襲撃に踏み切るが、失敗に終わってしまう。

村岡と景浦に絶縁され広島を追われた時森は、旧知の仲であった呉の山守組々長・山守義雄に助けを求め、山守の口利きで広能昌三率いる広能組の客分となる。

広能の暗躍

山守との確執を抱えながらも、広能は若衆たちの生活のために仕方なく時森を匿うが、時森を追った山中が広能の許を訪れると、村岡組と大友組の抗争を収束させるために時森を村岡組に引き渡すことを約束する。

広能の企みに勘づいた時森は広能の許から逃亡するが、自宅にいるところを広能組々員・島田幸一に射殺される。時森の死をもって村岡組は大友連合会と手打ちし、大友組は消滅したかに見えたが、勝利は密かに広島での復権を目論んでいた。

山中は、勝利に代わり二代目大友連合会々長に就任した倉光俊男の暗殺を計画していた大友組々員らを射殺し、殺人罪で無期懲役に処される。

山中の脱獄

山中は獄中で再開した高梨から村岡の口利きで靖子が再婚させられそうになっていることを聞かされ、結核を偽装して刑務所から脱走する。

脱獄した山中は村岡の許を訪れるが、村岡らに騙され、靖子の件が高梨の虚言であったと思い込まされる。大友組が白昼の往来で村岡を襲撃すると警察が捜査に乗り出し、村岡組は身動きがとれなくなるが、山中は単身で大友組を襲撃し勝利に重傷を負わせる。

激化していく抗争に嫌気した大友組幹部・中原敬助が村岡組に和解を持ちかけたことから勝利の居場所が漏れ、勝利は警察に逮捕される。

深夜の逃走劇

勝利の逮捕によって抗争は村岡組の勝利に終わるが、山中が真実を知ることを恐れた村岡は、高梨が仮出所すると間もなく、山中に脱獄のきっかけとなった一件を仄めかし、高梨を殺害させる。

高梨を射殺した山中はその足で村岡組若頭・松永弘の自宅へ駆け込むと、村岡に騙されていたことを松永に知らされる。真実を知って茫然自失とする山中は警官に発見され、逃走を試みるが、完全に包囲されてしまう。絶望した山中は砂を詰めた拳銃を口にくわえ、自害する。

山中の葬儀に参列した広能は、組織に迷惑をかけずに死んでいった山中を口々に褒め称える親分衆の言葉を聞きながら、組織の犠牲となって死んでいった若者の無念を思い、苦々しい顔で紫煙をくゆらせる。

「仁義なき戦い 広島死闘篇」登場人物

「仁義なき戦い 広島死闘篇」は前作にも増して登場人物が多く、またその関係性も入り組んでいるため、一見しただけでは相関図を理解しにくい作品であるといえます。ここでは本作の主要な登場人物についてご紹介していきます。

山中正治(北大路欣也)

村岡組々員。本作の実質的な主人公。無鉄砲なほどの激しい暴力衝動の持ち主だが、村岡組のためなら懲役を辞さないなど忠誠心は非常に厚い。獄中で食べ物を差し入れた広能昌三を慕っている。内縁の妻・上原靖子の身を案じて脱獄するが、逃走の末、警察官らに追い詰められて壮絶な最期を遂げる。「殺人鬼」と呼ばれ、広島ヤクザの典型として名を高らしめた岡組々員・山上光治氏がモデル。

村岡常夫(名和宏)

村岡組々長。大友連合会の一派にリンチされていた山中を村岡組に引き入れる際、高額な腕時計を山中にプレゼントするなど気前が良く面倒見も良いが、大組織の親分の例に漏れず、保身のためなら権謀術数を弄することも辞さない冷徹さを持ち併せている。身内には甘い一面があり、姪である上原靖子をわが娘のように寵愛している。モデルは岡組々長・岡敏夫氏。

松永弘(成田三樹夫)

村岡組若頭。優れた頭脳で村岡組を支える村岡の忠実な右腕。山中の内縁の妻である靖子を利用するカタチで山中を操り組織に貢献させるなど、村岡にも劣らない冷徹さの持ち主だが、村岡の虚言に踊らされた山中が村岡の舎弟・高梨国松を射殺した際には、思わず山中に真実を告げてしまう人情味のある一面も。村岡組の若頭として続編でも活躍をみせる。モデルは岡組幹部・網野光三郎氏。

高梨国松(小池朝雄)

村岡組幹部。面倒見の良い兄貴肌で、山中が村岡の姪である靖子と男女の仲になったときには激怒した村岡と山中の間に立って仲裁し、獄中では村岡が靖子を再婚させようとしていることを山中に報せるなど、なにかと山中を気にかけていたが、秘密を漏らした廉で村岡の怒りを買い、山中に射殺されてしまう。モデルは岡組幹部で政治家の高橋国穂氏。

上原靖子(梶芽衣子)

村岡の姪。夫を戦争で亡くし、闇市の食堂を切り盛りしながら女手ひとつで幼い娘を育てている。無銭飲食をして大友勝利らにリンチされている山中を助け、山中が村岡組に加入するきっかけを作った。遊び半分で誘った山中に組み敷かれて男女の仲になって以降、山中を一途に愛し、戦死した夫の弟との縁談を拒み続けるなど、組織のために山中を翻弄する村岡はじめ村岡組に強い反発心を抱いている。

大友勝利(千葉真一)

大友組々長で、テキヤ大友連合会々長・大友長次の実子。村岡組との抗争の火種を作るなど非常に好戦的だが、武器がなければ喧嘩もままならない臆病な一面を持ち合わせている。村岡組に対して及び腰の上層部に反発して破門にされるが、強硬派である時森勘市の暖簾を継ぎ、側近らと共に博徒大友組を結成する。「仁義なき戦い 完結篇」で再登場し、さらなる狂犬ぶりを発揮している。モデルは村上組幹部・村上正明氏。

大友長次(加藤嘉)

初代大友連合会々長。実子である勝利とは似ても似つかない、義理と人情を重んずる古いタイプの侠客。勝利に村岡組の競艇場の利権の横取りを提案されるが、ギャンブルである競艇は博徒である村岡のシマにこそ相応しいとして意見を撥ね退け、勝利に破門を言い渡す。モデルは村上組々長・村上三次氏。

倉光俊男(中村錦司)

二代目大友連合会々長。大友長次と同様の穏健派。重要なポストに就いたにもかかわらず出番はほとんどない。破門された大友勝利に代わって大友連合会の会長を襲名するが、大友組の解散に伴い村岡組の傘下にくだる。モデルは村上組幹部・高木達夫氏。

中原敬助(室田日出男)

大友組幹部。大友連合会を破門された勝利と共に大友組を結成するが、村岡組との抗争には乗り気でなく、無軌道に暴れまわる勝利たちの悪行に恐怖を感じている。村岡組との抗争を収束させるため、旧知の仲であった松永に手打ちを申し込むが、謀略を疑った松永の差金により刺殺されてしまう。モデルは村上組々員・中本敬造氏。

景浦辰次郎(堀正夫)

広島ヤクザ社会の長老。山中が村岡と親子盃を交わす際には媒酌人を務めた。いかにも長老然とした威厳のある佇まいだが、電車内で大友組に襲撃され、醜態を晒しながら死んでいった。実行犯がその後、調子に乗って記者会見を開くなど、色々な意味で不憫な人物。モデルは清岡吉五郎氏。

時森勘市(遠藤辰雄)

景浦の舎弟分。急激に勢力を伸ばす村岡組に対抗するため大友組に与したことが裏目に出て、村岡組に命を狙われてしまう。旧知の仲であった山守を通して広能の世話になるが、広能にも見捨てられ、四面楚歌の状況の中、広能組の若衆・島田幸一に射殺される。

広能昌三(菅原文太)

広能組々長。シリーズの主人公だが、本作では主人公の座を山中に譲り、彼を裏からサポートするに留まっている。出番はそれほど多くないが、若衆のためを思って一度断った山守からの頼みを了承するなど、面倒見の良さとどっちつかずの性格が本作でもしっかりと描かれている。

島田幸一(前田吟)

広能組々員。広能のために野良犬を殺して肉を調達するなど、的の外れた忠誠心を発揮する一方で、広能の身代わりとして時森を射殺し、12年の懲役を甘んじて受け入れる肝の据わった一面も。山中と共に組織の犠牲となった哀しい若者のひとり。

山守義雄(金子信雄)

山守組々長。時森の世話を広能に押しつけておきながら、広能が裏切ると自身も村岡にあっさりと寝返り、山中の葬儀では広能に当て擦りを言うなど、その小物ぶりは本作でも健在。次作以降でもお得意の権謀術数を駆使して周囲を翻弄し続ける。

「仁義なき戦い 広島死闘篇」ネタバレ結末

ポイント

  • 広島抗争を題材にした実録映画シリーズの2作目
  • 本作では北大路欣也、千葉真一、菅原文太、梶芽衣子、成田三樹夫ら豪華キャストが登場
  • 実在したヤクザ山上光治(作中では山中正治)氏の生き様を中心に描いた番外編的な作品である

本作は前作「仁義なき戦い」に引き続き、第一次広島抗争の実情を生々しいドキュメントタッチで描いた作品です。前作の終盤で山守親分と袂を分かった広能が本作では自身の組を持っていることから、時系列上は前作の直後にあたることがわかります。

シリーズの主人公である広能昌三を演じる菅原文太の他、大物俳優として世界的な活躍を見せる北大路欣也や千葉真一、歌手としても有名な梶芽衣子、数々の悪役を演じた名俳優・成田三樹夫など、錚錚たる顔ぶれが画面を彩っています。

前作の主人公であった広能が本作では脇にまわり、山中正治と大友勝利という、相反する性格を持ち合わせたふたりの若きヤクザ者の生き様に焦点が当てられています。シリーズの中では番外編的な作品ですが、本作で初登場する村岡組若頭・松永弘は続編でも重要な役割を担う人物ですので、本作も欠かさずに鑑賞されることをおすすめします。

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