北野武は日本を代表する有名な映画監督のひとりでありながら、初監督作品から最新作までフィルモグラフィの大半をヤクザ映画が占める稀有な映画監督です。
また北野武は監督作品としてだけでなく俳優としても数多くの作品に出演し、独特の存在感とオーラで高い国内外から高い評価を得ています。
この記事では北野武監督作品のファンである筆者が「北野武監督の映画を観たいけれど、どの作品を見ればいいかわからない」という方に向けて、北野武が監督・出演している映画の中で特におすすめの作品を10本厳選し、ご紹介していきます。
誰もが知っている有名作からちょっとマニアックな作品まで幅広く網羅しているので、ぜひ参考にしてください。
その男、凶暴につき
一言でいうと
北野武の原点にして頂点
北野武の初監督作品です。当初この作品は「仁義なき戦い」をはじめとする数々の東映実録路線を手掛けたヤクザ映画界の伝説的監督である深作欣二が監督を務める予定でしたがスケジュールが合わずに降板し、主演の北野武が監督を兼ねることになりました。
初監督作品ということで奇妙なカット割りが目につきますが、後に北野武が監督する作品のすべての要素が高密度で詰まっており、北野武監督の映画を観るうえで避けて通ることのできない重要な作品だといえるでしょう。
アウトレイジ
一言でいうと
北野武版「仁義なき戦い」
アウトレイジは北野武監督作品の中でもっともヤクザ色の濃いシリーズです。「アウトレイジ」「アウトレイジ ビヨンド」「アウトレイジ 最終章」の三作から成っており、ヤクザ世界の政治が生々しい暴力描写と渇いたユーモアたっぷりに描かれています。
白竜や大杉連、といった北野映画の常連俳優をはじめ、三浦友和、西田敏行などヤクザ映画ではあまり見ることのない大物俳優を多数起用した豪華キャストも大きな話題をさらいました。
三作ともストーリーが密接に繋がっているので、なるべく公開順に鑑賞することをおすすめします。
ソナチネ
一言でいうと
北野武の作風を決定づけた異端のヤクザ映画
沖縄を舞台にヤクザの抗争を描いた作品です。
キタノ・ブルーと呼ばれる独特の色使いと久石譲の音楽による静謐な雰囲気は前作「あの夏、いちばん静かな海。」が初出ですが、それらの要素と暴力描写が組み合わされたのは「ソナチネ」が初めてであり、本作こそ最新作「アウトレイジ 最終章」まで連綿と続く北野武監督の作風を確立した記念碑的な作品だといえるでしょう。
キッズ・リターン
一言でいうと
北野武が描く不良少年の友情と青春
ボクシングとヤクザの世界でもがき成長する不良少年の友情を描いた青春映画です。
ヤクザの世界を題材としているものの血なまぐささは薄く、ヤクザ映画とは馴染みのない一般の映画ファンの間でも高い評価を得ています。
北野作品としては珍しく前向きな作品で、観ればきっと明日への活力がわいてくることでしょう。暴力描写を期待して観ると肩透かしを食うかもしれませんが、エンタメとしては北野武監督映画の中でも屈指の完成度を誇っているので、偏見を持たずにぜひ鑑賞してみることをおすすめします。
バトル・ロワイアル
一言でいうと
殺しあう子供たちの姿を描いた衝撃の問題作
「バトル・ロワイアル」は高見広春の同名小説を原作としたSF映画です。北野武は主人公が所属するクラスの担任教師を演じており、人を食ったような演技で主演を凌ぐほどの大きな存在感を放っています。
本作は中学生が生き残りを賭けて殺し合いをするというショッキングな内容が世間の注目を集め、国内のみならず海外でも大きな話題を呼びました。
また本作との直接的な関係は不明ですが公開の4年後に原作小説のファンだった女子児童が同級生を殺害する事件が発生するなど、日本映画史に残る問題作として知られています。
BROTHER
一言でいうと
武闘派ヤクザVSマフィア
日本を追われた武闘派ヤクザとL.A.マフィアの死闘を描いたヤクザ映画です。北野武監督作品の中でもっともバイオレンス色の濃い映画のひとつで、海外のギャング映画ファンの間でも根強い人気を誇っています。
本作は海外を舞台にした唯一の監督作品で、キャストにも現地の俳優を多く起用しているなど北野武が監督した映画の中でも異色の作品だといえるでしょう。
本場ハリウッドのアクション映画と任侠映画の良いとこ取りをしたような完成度の高い作品なので、ヤクザ映画ファンはもちろん洋画をメインに観るという方にもおすすめですよ。
3-4X10月
一言でいうと
北野武の真骨頂が炸裂した隠れた名作
「その男、凶暴につき」に続く2作目の監督作品です。ヤクザとトラブルを起こした草野球チームの奮闘を描いた異色の作品で、北野武監督作品の中でも「みんな~やってるか!」に次いでコメディ色の強い作品でありながら北野映画特有の渇いた暴力も満載なので、北野武監督の作風が好きな方はチェックしてください。
主演の柳ユーレイをはじめ、ガダルカナル・タカやダンカン、井出らっきょ、松尾伴内、ラッシャー板前、つまみ枝豆などたけし軍団のメンバーが総出演しているので、お笑い芸人としてのビートたけしファンにもおすすめです。
HANA-BI
一言でいうと
ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した世界のキタノ出世作
北野武演じる居場所のない刑事の人生模様を描いた純愛映画です。北野映画の中でも特に純文学の香りが強く、ゴダールやトリュフォー、さらには大島渚といったヌーヴェル・ヴァーグの系譜に連なる作品に仕上がっています。
もちろん単なるドラマ映画ではなく北野映画らしい渇いた暴力とユーモアも惜しみなく散りばめられているので、血なまぐさくなければ物足りないというヤクザ映画ファンにもおすすめです。
菊次郎の夏
一言でいうと
ヤクザと少年の絆を描いた異色のロードムービー
北野武の通算八作目にあたる監督映画です。暴力描写をほとんど排した、笑って泣ける心温まるロードムービーに仕上がっているので、北野映画としてはほぼ唯一の家族で楽しめる作品だといえるでしょう。
本作は井出らっきょやグレート義太夫といったたけし軍団のメンバーに加え、ツービート時代の相方であるビートきよしも出演しており、映画としては初の共演を果たしています。
竜三と七人の子分たち
一言でいうと
北野武にしか撮れないヤクザ・コメディ
「竜三と七人の子分たち」は引退した老ヤクザと半グレたちの戦いを描いたコメディ映画です。本作に前後して製作された「アウトレイジ ビヨンド」では権力に執着するヤクザ幹部に焦点が当てられていますが、本作では一転して権力を諦めた男たちが若者相手に奮闘する様子がどこか突き放したような態度で描かれています。
北野映画の中でも特にとらえどころのない作品ですが、観るたびに新しい発見のある懐の深い映画なので、北野武監督のファンだという方はぜひ鑑賞してみてください。