ヤクザ映画

【孤狼の血】ネタバレ結末!あらすじ・登場人物まで徹底解説

映画「孤狼の血」は同名小説を原作としたヤクザ映画です。本作は豪華キャストの起用が大きな話題を呼んだ北野武監督映画「アウトレイジ」シリーズに対する東映からの回答ともいうべき作品で、1988年の広島を舞台に暴力団の抗争を防ぐべく命懸けで奔走する刑事たちの姿が描かれています。

本作の原作となった同名小説の著者・柚木裕子は執筆にあたって東映実録路線の傑作「県警対組織暴力」から大きな影響を受けたことを公言しており、映画「孤狼の血」もまた1970年代に隆盛をきわめた実録ヤクザ映画の系譜につらなる作品であるといっても過言ではありません。

今回は「孤狼の血」の詳細なあらすじと主要登場人物の設定、孤狼の血の世界をより深く楽しむための小ネタの数々をご紹介していきます。

「孤狼の血」あらすじ

プロローグ

昭和49年、呉原市の暴力団・尾谷組に広島市に拠点を置く五十子会が抗争を仕掛けた。両者は多数の死傷者を出し、報復合戦が繰り返されるなど抗争は泥沼の様相を呈したが、尾谷組々長・尾谷憲次の逮捕をもって勝者なき終結を迎えた。

それから14年、五十子会の下部組織である加古村組が尾谷組の残党に牙を剥いたことを発端に、呉原市に新たな抗争の火種が燻りはじめる。

同じ頃、加古村組のフロント企業である呉原金融の経理・上早稲二郎が失踪するという事件が発生し、事件に加古村組が関わっているとみた呉原東署捜査二課暴力団係が捜査にあたることとなる。

トレーニング・デイ

呉原東署捜査二課暴力団係の班長である大上章吾直属の部下として配属された日岡秀一は、上早稲失踪事件に関する情報を収集するため、配属早々に加古村組々員・苗代広行と命懸けの喧嘩を演じさせられる。

一方、加古村組は尾谷組の縄張りを荒らしまわり尾谷組を挑発するが、十年の懲役をちらつかせても口を割らない苗代の様子から上早稲の失踪の背後に大きな陰謀の匂いを嗅ぎつけた大上は、加古村組と敵対関係にある尾谷組の事務所を訪れ、若頭である一ノ瀬守孝に加古村組との揉め事を避けるよう言い含める。

五十子会々長・正平の兄弟分にして右翼団体である全日本祖國救済同盟の主催・瀧井銀次から拉致現場の旅館に関する情報を得た大上は、放火並びに窃盗という違法な手段で事件の証拠となるビデオテープの入手を試みる。日岡は警察官にあるまじき大上の行動を阻止しようとするが、誤って大上を殴り倒してしまった引け目からビデオテープの窃盗に手を染め、証拠の入手に貢献する。

抗争の火種

ある夜、クラブ梨子でのトラブルをきっかけに加古村組々員が尾谷組々員を射殺するという事件が発生し、その報復として加古村組事務所に銃弾を撃ちこんだ尾谷組々員を日岡が現行犯逮捕する。大上は加古村組と尾谷組の抗争を阻止するべく鳥取刑務所に服役する尾谷憲次の許を訪れ、三日という期限付きで加古村組との抗争を先延ばしする約束を取り付ける。

三日以内に加古村組が上早稲の失踪に関与している決定的な証拠を集めることを余儀なくされた大上は、クラブ梨子のママ・高木里佳子の協力を得て加古村組々員である吉田滋を拉致し、加古村組が上早稲を拉致・殺害に関与しているという決定的な情報を得る。さらに殺害の現場となった養豚農家を訪れて養豚農家の息子で加古村組準構成員と見られる男に拷問紛いの尋問を加え、ある無人島に上早稲の遺体を遺棄したことを聞き出す。

失踪

尾谷組との約束期限ギリギリに上早稲の遺体を発見した呉原東署は苗代ら加古村組々員を指名手配するが、大上は安芸新聞の記者・高坂隆文のリークにより14年前の殺害事件への関与を疑われ、自宅謹慎を命じられてしまう。大上の謹慎処分に激昂した尾谷組は大上の不在を理由に約束を反故、加古村組に抗争を仕掛ける。

大上は謹慎を破って五十子会々長・五十子正平の許を訪ね、条件つきで手打ちの約束を取り付けるが、尾谷組若頭である一ノ瀬はこの条件を拒否、獄中の尾谷憲次にも断られてしまう。尾谷組と加古村組の抗争をなんとしても阻止したい大上は単身で五十子会の許を訪ね、そのまま行方不明となる。

大上の身を案じた日岡は大上と親交の深い瀧井銀次、高木里佳子に協力を仰ぎ、そこで大上の本性と警察官の弱味を記したノートの存在、14年前の殺人事件の真相を知らされる。

大上の死

大上が溺死体で発見され、腹部に多数の刺し傷があるにもかかわらず遺体からアルコールと睡眠薬が検出されたことから警察は大上の死を事故と発表・処理される。五十子会の関与を確信した日岡は単身で善田親子が経営する養豚場を訪れ、現場で大上が愛用していた狼のジッポを発見する。

大上の意思を継ぐことを決意した日岡は瀧井に協力を仰ぎ、仁正会が主催するイベントの会場で尾谷組に五十子会を襲撃させる計画を立てる。五十子正平が会場のトイレに入ったタイミングで一ノ瀬ら尾谷組々員を会場に招き入れて一ノ瀬に五十子を殺害させ、イベントに出席していた県警監査官室の上司・嵯峨大輔を瀧井の手引きで会場から逃げさせる。

他の暴力団係の刑事と共に会場に乗りこんだ日岡は五十子殺害の実行犯である一ノ瀬を現行犯逮捕、会場から逃げたことをネタに嵯峨を脅迫し、暴力団係の刑事として呉原東署に残ることを要求する。後日、大上の墓前で岡田桃子に再開した日岡は桃子が大上の差金であったことを知り、苦笑しながら大上の遺品である狼のジッポで煙草に火を点す。

「孤狼の血」登場人物

日岡秀一(松坂桃李)

広島県警呉原東署捜査二課暴力団係の巡査にして本作の主人公。呉原東署随一の悪徳刑事と名高い大上の部下として暴力団の取締にあたる一方で、広島県警監査官室の密偵として大上の身辺調査をおこなう。当初は違法捜査を厭わない大上の手法を非難していたが、やがて大上の意思を継ぎ、大上顔負けの苛烈な手段で暴力団の取締にあたる。

大上章吾(役所広司)

呉原東署捜査二課暴力団係の班長。日岡が県警監査官室の内偵であることを知りながら、上司としてマル暴のノウハウを一から叩きこむ。ヤクザ顔負けの言動と苛烈な捜査手法から地元のヤクザに恐れられる悪徳刑事で、ヤクザから賄賂を受け取るなどヤクザと癒着しているかのように見えるが、その実はヤクザを忌み嫌い、健全な市民の安全をなにより願っている。

一ノ瀬守孝(江口洋介)

尾谷組若頭にして劇中随一の男前。獄中の尾谷組々長に代わって尾谷組を取り仕切っている。イケイケの武闘派ヤクザで、若頭という身分にもかかわらず敵対する五十子会々長を襲撃した際には自ら五十子を殺害し、さらにドスで生首を切断するという猟奇性を発揮した。

尾谷憲次(伊吹吾郎)

尾谷組々長。非常に人望が厚く、五十子会との抗争で入獄して以降も獄中から一ノ瀬に尾谷組の指針を示している。

五十子正平(石橋蓮司)

仁正会系五十子会々長。尾谷組とは長らく敵対関係にあり、下部組織である加古村組を利用して尾谷組を挑発し、抗争に乗じて縄張りを横取りしようと目論んでいる。弟分にあたる瀧井銀次の手引きで尾谷組の襲撃を受け、斬殺される。

加古村猛(嶋田久作)

仁正会系加古村組々長。一見すると物静かだが、その実は愚連隊上がりのバリバリの武闘派ヤクザ。五十子会の手先として組員らに尾谷組の縄張りを荒らしまわらせ、抗争の火種を作った。

野崎康介(竹野内豊)

加古村組若頭として、ならず者揃いの加古村組構成員らをまとめ上げる影の実力者。養豚場で上早稲をリンチする際に豚の糞を無理やり食わせるなど残虐性は高い。

●苗代広行(勝矢)

加古村組若衆にして喧嘩自慢の武闘派ヤクザ。上早稲二郎の拉致・殺害の実行犯として指名手配され逃亡するが、コンパニオンと乱痴気騒ぎを繰り広げているところを警察に踏みこまれ、逮捕される。

日本統一ではお馴染みのキャラクタ。

●吉田滋(音尾琢真)

加古村組若衆。イケイケの武闘派ヤクザだが、大上の拷問紛いの尋問に心を折られて上早稲二郎殺害の真相を告白し、広島から姿を眩ませる。

●善田大輝(岩永ジョーイ)

イカしたリーゼントのシャブ中。加古村組々員の友人の頼みで父親が経営する養豚場を加古村組に提供する。大上殺害に手を貸したことをきっかけに正式な加古村組々員となるが、激昂した日岡に激しい殴打を受け瀕死の重傷を負う。

●瀧井銀次(ピエール瀧)

仁正会系瀧井組々長にして全日本祖國救済同盟の主催。女癖が非常に悪く、浮気がバレて妻に殺されそうになっているところを大上に助けられる。大上とは堅い信頼関係で結ばれており、大上の死後は大上の意思を継いだ日岡に協力し、尾谷組が五十子を襲撃する舞台を整えた。

●上早稲二郎(駿河太郎)

仁正会系加古村組のフロント企業である呉原金融の経理。カタギであるにもかかわらず、気弱であるが故に加古村組員らの使いこみの濡れ衣を着せられ、殺害されてしまう。

●嵯峨大輔(滝藤賢一)

広島県警監査官室の警視。直属の部下である日岡に大上の内偵を任命して大上に握られている弱みを揉み消そうとするが、大上に感化した日岡に裏切られ、日岡にまで弱味を握られてしまう。

●高坂隆文(中村獅童)

安芸新聞記者。14年前の殺人事件の真相を追って大上の周辺を嗅ぎまわる。

●高木里佳子(真木よう子)

クラブ梨子のママ。過去の殺人罪を揉み消してもらったことに恩義を感じ、大上を影ながらサポートする。

●岡田桃子(阿部純子)

暴力団員である夫の暴力に困っていたところを大上に助けられ、里佳子と同様に大上のサポーターとなる。日岡が密偵であることを疑った大上の差金として日岡の傷の手当をし、男女の仲となる。

「孤狼の血」作品秘話・小ネタ

東映実録路線映画の影響

小説「虎狼の血」の著者である柚木裕子は本作を執筆するにあたって、「仁義なき戦い」をはじめとする東映実録路線の映画から多大な影響を受けたことを公言しています。

特に悪徳警官とヤクザの癒着を描いた実録映画の傑作「県警対組織暴力」は本作に大きな影響を与えており、演出面では「仁義なき戦い」のオマージュが多く見受けられるものの、基本的なコンセプトや世界観において「県警対組織暴力」が下敷きになっていることは明らかです。

たとえば大上章吾の人物造形は菅原文太演じる久能徳松に酷似していますし、一ノ瀬守孝は「県警対組織暴力」でいうところの広谷賢次、主人公である日岡秀一の潔癖な態度は海田昭一を彷彿とさせます。

「孤狼の血」のルーツに触れたいという方は、是非「県警対組織暴力」と「仁義なき戦い」シリーズを鑑賞してみてください。

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【仁義なき戦い】ネタバレ結末!あらすじ・登場人物まで徹底解説

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原作小説との相違点①

先でも述べているように本作は柚木裕子の同名小説を原作としていますが、原作との相違点は多く、映像化するにあたって濃厚な独自色が加えられています。

中でも最大のオリジナル要素として挙げられるのが、岡田桃子の存在です。桃子は大上の差金として日岡と男女の仲となりますが、そもそも原作小説には岡田桃子にあたる人物は登場しません。ストーリーの進行に直接関わりはないものの登場頻度は比較的多く、さらにエンディングでは重要な役割を演じるなど存在感の大きいキャラクターであるだけに、岡田桃子は映画版と小説版の差異を象徴する存在であると言えるでしょう。

原作小説との相違点②

次に大きな相違点が養豚場です。映画では冒頭の上早稲がリンチを加えられる場面や大上が殺害される場面で養豚場が舞台となっていますが、原作では養豚場は登場せず、上早稲殺害の証拠隠滅にかかわる親子は養豚農家ではなく漁師という設定になっています。

漁師を養豚農家に変更したことで猟奇性を高めるばかりでなく豚の糞を食わせる場面など視覚的にインパクトの大きい場面が誕生し、結果として本作をヤクザ映画としてより鮮烈な作品に至らしめました。

また本作のクライマックスである五十子正平殺害シーンや、大上が吉田のペニスから真珠を摘出するシーン、さらには五十子の「びっくりどっきりクリトリス」という迷言など、インパクトの大きい場面の多くは映画版のオリジナルです。

「孤狼の血」の続編

柚木裕子による警察小説シリーズの第一作である「孤狼の血」には「凶犬の眼」「暴虎の牙」という二作の続編があり、三作目にあたる「暴虎の牙」をもって完結しています。

本シリーズの主人公・日岡の成長を描いたシリーズ二作目「凶犬の眼」は本作の上映時点で既に映画化が決定しており、「孤狼の血」に続く新生東映ヤクザ映画の第二弾として鋭意進行中です。

また「凶犬の眼」では通称・山一抗争と呼ばれる山口組と一和会の間で勃発した実際の抗争事件を題材としているため、同じく山一抗争を題材としたヤクザ映画「激動の1750日」や「極道の妻たち」で予習をしておくと良いかもしれません。

「孤狼の血」ネタバレ結末

ポイント

  • 柚木裕子の同名小説を原作としたヤクザ映画
  • 1980年代後半の広島を舞台に暴力団の抗争を阻止しようとする刑事たちの姿を描く
  • 役所広司や松坂桃李などアウトレイジシリーズにも劣らない豪華キャストが集結している

映画「孤狼の血」は柚木裕子の警察小説シリーズの第一作にあたる同名小説を原作としたヤクザ映画です。本作では暴力団の取締にあたる刑事、通称マル暴の視点から暴力団同士の抗争が勃発に至るまでの過程が丁寧に描かれています。

主演の役所広司と松坂桃李をはじめ、伊吹吾郎や石橋蓮司といったヤクザ映画の常連から、江口洋介や竹野内豊などヤクザ映画とは無縁の大物俳優まで豪華キャスト陣が集結し、暴力的ながら華やかな雰囲気さえ漂う作品に仕上がっています。

映画「孤狼の血」はヤクザ映画としてだけでなく、エンタメ映画としても非常に高い水準に達している作品なので是非鑑賞してみてください。また本作はヤクザ映画の中でも特に暴力描写が濃厚なので、暴力描写が苦手という方はくれぐれもご注意ください。

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