東映ヤクザ映画

【極道の妻たち】ネタバレ結末!あらすじ・登場人物まで徹底解説

映画「極道の妻たち」は同名映画シリーズの第一作目として1986年に公開されました。本シリーズではこれまでのヤクザ映画とは趣を異にして極道社会に生きる女性たちの壮絶な生き様に主眼を当てています。

東映が「仁義なき戦い」をはじめとする実録路線映画で培ったノウハウは本作においても健在であり、リアリズムとロマンチシズムが混淆する重厚な世界観は「仁義なき戦い」にも劣らない高い人気を誇り、続編からリメイクに至るまで数多くの派生作品が製作されています。

今回は「極道の妻たち」の詳細なあらすじと主要登場人物の設定、極妻の世界をより深く楽しむための小ネタの数々をご紹介していきます。

「極道の妻たち」あらすじ

プロローグ

堂本組若頭補佐・粟津等の妻である粟津環は、服役中の粟津組々員を夫にもつ女性たちのガス抜きを目的とした「懲役寡婦の会」を主催するばかりでなく、服役中の夫に代わって粟津組を預かっている間に巧みな手腕で組の勢力を拡大して粟津組のみならず堂本組内においても強固な地位を築く。

一方、粟津環の実妹である池真琴はスナックでアルバイトをしながら、病身をおして小さな工場を経営する父とふたりで倹しく暮らしていたが、ある日突然、不渡りを出した父の夜逃げを防ぐため、取り立て屋のチンピラ(清野伴司)が工場に送りこまれる。

総長の

環が亡き母の仏壇に手を合わせるため実家である工場を訪ねていたとき、堂本組総長の訃報が舞いこむ。

総長の遺言に従って堂本組若頭・柿沼辰郎が二代目総長の跡目相続人となるが、過激派である柿沼の相続をよしとしない堂本組舎弟頭・蔵川将大は、舎弟頭補佐・小磯正明らを率いて堂本組を離脱し、朋竜会を結成する。

小磯は堂本組内でも大きな勢力を誇る粟津組を朋竜会に引きこむべく環に接触するが、環ににべもなく断られてしまう。

環は堂本組と朋竜会の抗争勃発を懸念しながらも、真琴の身を案じて不動産会社の御曹司との縁談をセッティングし、真琴は父の借金を返すために不承不承ながら婚約を受け入れる。

分裂

堂本組の勧誘に失敗した小磯は、直属の子分格である杉田組々長・杉田潔志に二代目堂本組総長に就任した柿沼の暗殺を命じる。

武器を調達するためにグアムを訪れていた杉田は、スナックの客としてかねてから好意を抱いていた真琴とビーチで偶然の再会を果たすが、かつて自分を振った真琴が婚約指輪を嵌めていることに激昂し、真琴をホテルの部屋に誘いこんで強引に犯す。

また粟津組系の事務所が小磯組々員らに襲撃されるなど、堂本組と朋竜会の抗争は次第に表面化していく。

真琴は杉田に犯されたことを理由に婚約を破棄する旨を環に伝えるが、環はそれを一蹴するばかりか裏に極道の存在を嗅ぎつけ、粟津組々員らに杉田の捜索を命じる。

抗争

二代目堂本組総長に就任した柿沼が襲撃されて緊急入院すると、堂本組はそれを朋竜会の宣戦布告とみなし、両者は全面戦争に突入する。

一方、柿沼の襲撃に杉田が関与していることを直感した真琴は自ら杉田に接触するが、杉田の誠意と覚悟にほだされて夫婦の契りを交わす。ふたりは晴れて夫婦になったが、その直後に柿沼襲撃の関与を疑った警察が杉田を拘留する。

先代総長の妻・堂本絹江に呼び出された環は、関東に拠点を置く組織の仲介で朋竜会と手打ちする旨を告げられ。環は夫が出所するまで待って欲しいと頭を下げるが、絹江に撥ねつけられてしまう。

見せかけの終結

小磯正明の妻・小磯泰子は堂本組勢力に自宅を襲撃されて身の危険を感じ、小磯と環の抗争終結に向けた会合を独断でセッティングする。ふたりは話し合いの末、小磯組の解散を条件に抗争終結に合意する。また粟津組が抗争終結に大きく貢献したことから、粟津等の三代目就任が濃厚となる。

保釈されて小磯の引退宣言を知った杉田は、家族で海水浴を楽しむ小磯の許を訪れて真意を問い質すが、開き直った小磯の態度に愛想を尽かして行方をくらませる。

それぞれの最期

杉田を失い、さらに父を亡くした真琴は環を頼って粟津組の監視下で暮らしはじめる。あるとき粟津組が杉田の行方を知っていることを察した真琴は、環に杉田との再会を訴えるが、環はこれを拒否。壮絶な姉妹喧嘩の末、環は姉妹の縁を切ることを条件に真琴に杉田との再会を許す。

ふたりがアパートの一室で再会を果たして間もなく、粟津組の一員となった清野が真琴の目の前で杉田を刺殺する。

服役を終えた粟津等もまた刑務所を出た直後に杉田組々員・花田太市に襲撃され、環の目の前で命を落とす。

「極道の妻たち」登場人物

粟津環(岩下志麻)

本作の狂言回し。堂本組系粟津組々長・粟津等の妻として、夫の服役中に粟津組の勢力を2倍以上に拡大させた実力者。大組織の幹部と対等に渡り合い、敵対勢力の襲撃にも動じない姿は男前のひとこと。

池真琴(かたせ梨乃)

本作の主人公。スナックでアルバイトをする傍ら病身をおして工場を経営する父を支える健気さと、夫を刺殺したチンピラを射殺する気性の激しさを併せ持っている。粟津真琴の実妹ながら粟津組の敵対勢力である朋竜会系杉田組々長・杉田潔志の妻となることを選んだ。

杉田潔志(世良公則)

朋竜会系杉田組々長。池真琴を強引な手段で妻に娶ったにもかかわらず、献身的なまでの誠意で真琴からの愛情を勝ち取った伊達男。粟津組のチンピラに襲撃され、愛する真琴の腕の中で息を引き取った。

小磯正明(成田三樹夫)

堂本組の舎弟頭補佐を務めていたが、過激派の柿沼辰郎が二代目総長に就任したことを不服とし、兄貴分である蔵川将大と共に朋竜会を立ち上げる。かつて環に惚れていたこともあるらしく、粟津等に対して腹に一物抱えている様子。朋竜会の実質的なトップ。

清野伴司(清水宏次朗)

取り立て屋として池保造の工場に入り浸っていたが、身を挺して下着泥棒を捕まえたことから保造の信用を勝ち取ったばかりか、環にも認められて保造の死後には粟津組の一員に取り立てられた。環の命令を受けて杉田を刺殺するも、真琴に射殺されてしまう。

花田太市(竹内力)

朋竜会系杉田組若衆。チンピラ然とした頼りない風貌だが、自己紹介の際に発した「やるときゃやります」という言葉どおり出所した粟津等を見事に射殺し、有言実行ぶりを見せつけた。

柿沼辰郎(岩尾正隆)

二代目堂本組総長。若頭という役職から過激派として堂本組に大きく貢献したことが察せられるが、二代目総長に就任して早々組織が分裂するなど人望はそれほど厚くない様子。

池保造(大坂志郎)

環と真琴の父。病身をおして小さな工場を経営している。はじめは取り立て屋の清野伴司を忌み嫌っていたが、清野が身を挺して下着泥棒を捕まえると態度は一変、真琴のグアム土産を譲るほど清野を可愛がるまでに。心労がたたってか物語半ばで病死する。

堂本絹江(藤間紫)

初代堂本組総長の妻。夫亡き後は総長代行として堂本組を取り仕切っているだけあって、女だてらに若衆とは比べものにならないほどの貫禄を誇る。

小磯泰子(佳那晃子)

朋竜会系小磯組々長・小磯正明の妻でありながら、粟津環を強くしたっている。堂本組と朋竜会の抗争が激化して自宅が襲撃されると、我が子の安全を守るため独断で環に接触し、抗争の終結に大きく貢献した。

粟津等(佐藤慶)

堂本組系粟津組々長。ほとんど出番がないため人となりは不明だが、環が認めているからには相当の人物であると推測される。

蔵川将大(疋田泰盛)

堂本組舎弟頭。小磯正明らと共に堂本組を離脱し、朋竜会々長という超重要な役職に就いているにもかかわらず、出番はほとんどない。

「極道の妻たち」作品秘話・小ネタ

「極妻」誕生秘話

本作の脚本は「仁義なき戦い 完結篇」をはじめ「実録外伝 大阪電撃作戦」「沖縄やくざ戦争」「日本の首領」シリーズなど、数々の東映実録路線作品で知られる名脚本家・高田宏治によって手掛けられました。

笠原和夫が「仁義なき戦い」シリーズ四作品において女性の存在を排除したきわめて男性優位な世界を作り上げたのに対し、高田宏治は「仁義なき戦い 完結篇」でヤクザを影から支える女性の姿にスポットを当て、ファンの間で大きな物議を醸しました。

「出世の影に女あり」という高田宏治の哲学は後の「北陸代理戦争」や「鬼龍院花子の生涯」においてより顕著となり、本作を含めた「極道の妻たち」シリーズにおいて頂点を極めたと言えるでしょう。

本作の冒頭で堂本絹江が懲役寡婦の会の面々に向かって発した「女房の後押しがないと、男稼業は立っていかしまへん」という台詞は、そんな高田宏治の哲学を代弁しているように思えてなりません。

堂本組と朋竜会の抗争は本当にあった!?

作品冒頭の注釈にあるように、映画「極道の妻たち」は家田壮子の同名ルポルタージュを基に映画ようにフィクションとして構成したものであるため、登場する人物および団体の名称は架空で実在するものとはなんら関係ありません。

しかし、堂本組と朋竜会にはそれぞれモデルとなった団体があります。

堂本組のモデルが山口組であることは明白ですから、二代目堂本組総長に就任した柿沼辰郎は四代目山口組々長・竹中正久氏を、朋竜会々長・蔵川将大と小磯正明はそれぞれ一和会の山本広氏と加茂田重政氏をモデルにしていることがわかります。

山口組と一和会の抗争は通称「山一抗争」と呼ばれ、本作をはじめ「激動の1750日」などさまざまなヤクザ映画の題材となりました。

リメイク版「極道の妻たち」

「極道の妻たち」は9本の続編に加え、高島礼子と黒谷友香をそれぞれ主演に据えた2本の新シリーズ作品が製作されています。

中でも高島礼子版「極道の妻たち」シリーズは予算の関係から劇場公開作ではなく、レンタルビデオ主導のいわゆるVシネマとして製作されたにもかかわらず大ヒットを記録し、高島礼子の出世作となりました。

ちなみに家田壮子のルポルタージュのタイトルが「極道の妻(つま)たち」であるのに対し、黒谷友香が主演を務めた「極道の妻たち NEO」を除いて、映画作品はすべて「極道の妻(おんな)たち」と読ませるので、読み間違いのないようご注意ください。

「極道の妻たち」ネタバレ結末

  • 本作は実録路線に続く新境地を切り開いたヤクザ映画シリーズ
  • 家田壮子の同名ルポを原作に極道社会に生きる女たちの壮絶な生き様を描いている
  • シリーズ一作目にあたる本作では実際に起きた抗争事件が物語の下敷きとなっている

「極道の妻たち」は家田荘子の同名ルポルタージュを原作にしたヤクザ映画です。従来のヤクザ映画が一貫して男の世界であったのに対し、「極道の妻たち」では極道社会を生きる女たちに焦点を絞り、男たちに翻弄される女の悲哀としたたかさをリアルかつドラマチックに描いています。

家田荘子の原作に加え実際の抗争事件を下敷きにしたストーリーは細部に至るまで凄まじいまでのリアリティに満ちており、その壮絶さは「仁義なき戦い」をはじめとする実録路線映画に比べても遜色のないほどです。

続編にあたる「極道の妻たち Ⅱ」ではストーリー上の繋がりこそないものの重厚な世界観は健在ですし、また本作以上に豪華なキャスト陣が名を連ねているので是非欠かさずに鑑賞されることをおすすめします。

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