「虎狼の群れ」は実力派俳優の菅田俊が主演を務めるヤクザ映画です。シリーズとしては2作目まであり、前篇と後編のように分かれています。ストーリーも登場人物もすべて直接繋がっていますので、2つで1本のような映画だと捉えて良いでしょう。
殺陣や銃撃などのアクションは多くありませんが、最後までハラハラするような一触即発のサスペンス的な作品となっています。
「虎狼の群れ」シリーズは様々な登場人物が裏で暗躍して、裏切り者がいたりするなどのサスペンス作品なので人間関係が分かりにくいところがありますよね。ここではネタバレを含めて、登場人物やストーリーを解説します。
あらすじ
火浦島3年前の抗争
孤島である火浦島では、花房一家・蛯名組・柏田組で結成された黒龍会によって平和が保たれていました。現在から3年遡り、2014年に柏田組と花房一家との間で覚醒剤の利権をめぐる争いが勃発。
抗争の果てに柏田組の若頭である石堂明人が花房一家に殺害されます。石堂殺害から火浦所の刑事である加倉政司たちによる過激な取り締りにより、花房一家の若頭である戸塚は刑務所に収監され組長は行方不明。花房一家は事実上に解散となり、抗争は終結となりました。
蛯名組の不穏な動き
抗争から3年が経過し2017年。島は平穏を取り戻していたが花房一家の若頭戸塚の出所に伴い、蛯名組が不穏な動きを見せ始めます。大阪の巨大なヤクザである大和田組と花房一家の若頭補佐の武が接触しているとの情報や、覚醒剤の売人である柴田の死といったきな臭い話が後を立ちません。
加倉の幼馴染である柏田組組長の鮫島も蛯名組に探りを入れていることから、疑惑は確信へと変わっていきます。火浦における再びの抗争を恐れた加倉は島に新しく配属となった若手刑事のイケザワケイタと共に調査を始めます。
加倉は蛯名組の覚醒剤の売人を片っ端から捕まえ尋問します。その捜査の過激さにイケザワは驚きつつも、やがて蛯名組と花房一家が関西の巨大組織、大和田組と繋がっていることがわかってきました。
柏田組幹部、蛯名組組長死亡
そしてある日、柏田組幹部であるカツが蛯名組と思われる組員たちに殺害されてしまいます。柏田組組長鮫島は、恐らくは花房一家と大和田組と組んでいる蛯名組との抗争が避けられないものになりつつあると、覚悟を固めていくのでした。
しかし事態はさらに急変し、蛯名組組長の蛯名夏男が変死。さらには蛯名組組長の息子であるゴウが蛯名組の組員から虐待を受けていることを、加倉は鮫島の娘であるハルミから耳にします。
そして加倉はついに強行手段を用いて、鮫島の妻であるケイコと共に花房一家の若頭補佐である武を尋問し、加倉は全てのからくりを武の口から吐かせました。
火浦に大和田組を引き込んだのも、蛯名組と手を組むことを命じたのも全ては花房一家の若頭である戸塚が裏で糸を引いていたことだったのです。
二度目の抗争間近
柏田組の幹部が殺されたことにより、火浦はいつ二度目の抗争が起きてもおかしくない状態です。鮫島は蛯名組との抗争、加倉は戸塚との決着を決意します。
抗争を覚悟した鮫島は妻のケイコと娘のハルミを島から避難させようとしました。島から離れる当日、イケザワが見送りに行きましたが蛯名組の組員たちにイケザワとハルミが捕まってしまいます。
イケザワとハルミは蛯名組に戸塚のいる人気のない場所に連れられてしまいました。ハルミには自分の出生の真実を告げられ、イケザワは蛯名組に暴行を加えられてしまいます。そして、失意のハルミとイケザワの元に加倉が駆けつけ、ついに加倉と戸塚は向き合うことになりました。
加倉の機転により、イケザワとハルミは脱出。加倉と戸塚はお互いに銃を向け合います。
明かされる真実とラストシーン
戸塚の元から脱出したイケザワはハルミから衝撃的な事実を伝えられます。
その真実とは、かつての柏田組若頭である石堂の殺害を命じ現在では行方不明となっている人物、花房一家組長の国分重治を殺害したのはハルミということでした。
かつてその現場に居合わせた加倉と鮫島は「ハルミはここにいなかった」ということにして、国分の死体は加倉と鮫島が処理しました。
そして現在、加倉の奮闘により戸塚は死亡し紛争は未然に防げました。蛯名組はゴウが警察に渡した証拠映像により解散。大和田組は火浦に介入できなくなり、火浦に平穏が戻りました。しかし、大和田組を止めようとした加倉は、後日死体となって発見されます。
鮫島はこれからも火浦を守ることを誓い、左遷となったイケザワは火浦に必ず戻ってくると誓って島を後にするのでした。
登場人物
火浦署刑事たち
加倉政司(菅田俊)
火浦署に務めている刑事であり、この映画の主役にあたる人物。花房一家の若頭戸塚と柏田組組長の鮫島とはかつての幼馴染で、昔は悪さばかりしていました。火浦のヤクザ事情に関しては、火浦を守るためには必要悪であるという考えをもっています。火浦を守りたいという気持ちは人一倍強いですが、その凶暴さは現役ヤクザが怯えるほど。
3年前の抗争では、石堂が殺害されたことを機に激しい取り締まりを行い、花房一家を解散させます。作中では火浦を鮫島に託そうと奮闘し、県警への探りやゆすり、果てには花房一家の若頭補佐であった武を自ら殺害するほどです。
ラストシーンでは時系列がバラバラに映されますが、大和田組の若松に銃を発砲。その後は死体となって発見されました。
イケザワケイタ(忍成修吾)
火浦に新しく配属された若い警察官。黒帯を持っているらしく、格闘ではヤクザも圧倒するほど。序盤は大量の酒を飲ませられたり、加倉の無茶な捜査に戸惑いながらも共に行動していきます。
実は県警が放ったスパイでしたが、加倉とコンビを組み共に行動するにつれ加倉の想いに感化されていき、次第に火浦を守りたい気持ちが強くなっていきました。柏田組の娘であるハルミから好意を寄せられているが、二人の仲は最後でも明らかにはなりませんでした。ちなみに鮫島から手紙のやり取りをしてほしいと頼まれています。
ラストシーン付近では県警からの命令を軽視したとみられ名古屋に左遷され、出世街道から外れます。火浦を出る前に必ず火浦に戻ってくると誓い、火浦を後にしました。
菱田学(渡辺いっけい)
火浦署の所長を務めている人物。県警と癒着しており、覚醒剤で得られた金を県警に流していました。その情報は加倉に握られており、最後はそれをネタに菱田は最後で加倉に揺すられ、加倉の行動を静観することになりました。最終的にどうなったのかは不明です。
島枝課長(大友康平)
火浦署の課長を務めている人物。新しく配属となったイケザワの上司的な立ち位置であったが、イケザワと加倉が組んでからは出番はあまりありませんでした。
最後は蛯名組の1人息子のゴウが提供したディスクによって蛯名組を解散に追いやり、その後はいつも通りに火浦署で仕事に励んでいるようです。
花房一家
国分重治
花房一家の組長を務め、石堂殺害の命令を出した人物です。3年前の抗争から戸塚を始めとする組員が刑務所に収監されたことから、花房一家は事実上の解散、組長である国分は行方不明となりました。2作目の終盤では国分行方不明の真実が明らかになり、殺害されたことが判明します。
戸塚信也(小木茂光)
3年前から花房一家の若頭を務めていた人物。加倉と鮫島とは火浦で昔からの幼馴染です。ちなみに花房一家に入る前までは、柏田組の組員として加倉と鮫島と共に暴れていましたが、先代の柏田に破門され花房一家に入ります。
3年前の抗争後は、加倉の過激な取り締りによって刑務所に収監。そして現代になり出所して火浦に戻ってきました。
蛯名組と手を組み大和田組を火浦に引き込んだのも、加倉の妻の殺害を命じたのも戸塚です。一連の蛯名組の不穏な動きも全て戸塚が糸を引いてました。ラスト付近では、全ての仕組みを暴いた加倉が戸塚と対面し、加倉に射殺されます。
加倉や鮫島を裏切った理由は、3人の中で1番になりたかったと吐露しいましたが、本当の気持ちなのかはわかりません。
武秀平(仁科貴)
花房一家の若頭補佐を務めている人物。戸塚の手引により、火浦を乗っ取る策略に加担していました。
鮫島の妻であるケイコと一時期関係を持っていまいたが、作中ではその関係を利用され、加倉の罠に落ち殺害されます。
蛯名組
蛯名夏男(飯島大介)
蛯名組の組長を務めている人物。現在は高齢で少しボケが始まっており、若頭である岡部の助けがないと日常生活すら怪しいです。
2作目で花房一家と手を組んだ蛯名組だったが、夏男だけには知らされていませんでした。さらに、花房一家と手を組んだ蛯名組は、目障りとなった夏男を組全体で殺害します。夏男の最期は蛯名組の組員による仕業で、飼い犬に噛み殺されて死亡。夏男の死は蛯名組全体で隠蔽され、事故死として扱われました。
岡部敏治
蛯名組の若頭を務めている人物。時代は変わったと悟り、花房一家と大和田組と手を組みおこぼれを貰おうとしています。ボケた組長の蛯名夏男を疎ましく感じており、夏男殺害や花房一家とのやりとりで暗躍していきます。最後は鮫島に拷問を加えられ、戸塚との策略を全て吐きました。その後は生死不明です。
柏田組
鮫島(阿部亮平)
現柏田組組長を務める人物。3年前の抗争では、鮫島の目の前で兄貴分である石堂を殺害されてしまいます。
本当なら石堂に組長を務めてもらいたかった鮫島でしたが、石堂が死亡したことにより弟分の鮫島が組長を務めることになりました。昔ながらの古い気質のヤクザでありながら義理堅く、頭にすぐ血が昇りやすい性格をしています。
作中では終始ドスの効いた人物でしたが優しい面もあります。特に石堂の忘れ形見であるハルミは大切にしており、抗争が始まりそうになったら妻のケイコと共に火浦から脱出するように計らうなどしていました。ラストでは加倉と戸塚の決着を見守り、戸塚の最期を見届た人物の1人。最終的には加倉の意思を引き継ぎ、火浦を生涯守っていくことを誓います。
石堂明人(山下真司)
柏田組の若頭を務めていた人物。3年前の抗争で花房一家の刺客に突然撃たれて死亡します。娘のハルミは実は自分の娘ではなく、自分がかつて殺した名も知らないチンピラの娘です。その事実はハルミには伝えずに、鮫島だけに伝えていました。
カツ(元木大介)
元柏田組の幹部を務める人物。1作目でカツの死でエンドロールを迎えます。夜に蛯名組の組員に突然襲われ、めった刺しにされて死亡。カツの死をきっかけに、鮫島は蛯名組との全面戦争を覚悟することになります。
大和田組
若松
関西最大の組織である大和田組の上層部にいる人物。戸塚の手引きにより、火浦を乗っ取る計画を立てています。最期の生死も不明で、作中にもほとんど登場しない人物です。
その他
ハルミ(本田なお)
柏田組組長である鮫島とその妻ケイコの1人娘。学校に通いながら、ケイコが運営する店で手伝いをしている明るい子です。
本当は鮫島の娘ではなく、石堂が昔殺したチンピラの娘であり、母親の名前すら分かりませんでした。
実は花房一家の組長、国分重治を殺害した張本人かと思われる人物。国分の殺害現場に加倉と鮫島が居合わせており、鮫島曰く「あれは事故だった」とのこと。
加倉と鮫島がハルミのために「ハルはここにいなかった」と言って証拠を全て隠しました。国分殺害に関しては、不明点が多いため本当にハルミ自身が手を下したのかは明らかではありません。ラストはあまり登場しませんが、島に残りイケザワと手紙のやり取りをしているそうです。
蛯名ゴウ(川合諒)
蛯名組の一人息子である青年であり、よくハルミと一緒に登場します。障害を患っており、他人とコミュニケーションがうまく取れない状態です。実は蛯名組の組長である蛯名夏男が組員に殺されてるところを目撃しており、その映像データが入ったディスクをイケザワに渡そうとします。イケザワにディスクを渡すのは失敗しますが、最終的には芝山刑事の手に渡りました。このことがきっかけで、最後に蛯名組は解散へと追い込まれます。
より子(葉加瀬マイ)
加倉の妻にあたる人物。作中ではすでに死亡しており回想のみ登場します。交通事故で死亡したとされていましたが、実は戸塚が裏で糸を引いていたことが「2」で判明。運転手はひどい薬物中毒者であったのこと。その時には加倉の子供を身ごもっていたようです。
ケイコ(菜葉菜)
鮫島の妻である人物であり、柏田組がよく利用するバーを運営しています。加倉と共に花房一家の若頭補佐である武を罠にはめたりしていることから、度胸はかなりのものです。最終的には鮫島の計らいで、ハルミと一緒に火浦から一時的に避難させられます。作中では鮫島と喧嘩をするシーンもありましたが、基本的には鮫島を信用している良き妻です。
船長
火浦の港の船長を務めている人物。作中の序盤では鮫島組に尋問されているが、加倉や鮫島とは昔ながらの知り合い。実は数年前の国分の死体遺棄に加倉と鮫島に協力しており、加倉たちにとっては共犯者とも言える人物であります。息子が1人いますが、問題を起こして鮫島を怒らしていることからあまり賢くないようです。
カワダ
花房一家の若頭補佐である武が雇ったジャーナリスト。
県警やイケザワとも関係があり、加倉の過去をネタにゆすりをかけてきました。最終的にどちらの側についていたのかは不明です。作中では加倉をゆすりにかけますが、逆に加倉に拷問され傷を負い、武との関係を暴露します。盗聴や盗撮も過去の仕事で行っていたグレーな人物です。
ネタバレ結末まとめ
- 火浦に大和田組を誘い込んだのも、花房一家と蛯名組が手を組んだのも戸塚の計画。
- 国分(花房一家組長)はハルミが殺害に関わっており、加倉・鮫島が真実を隠蔽。
- 加倉は戸塚を殺した後、遺体となって発見
- 蛯名組は事実上の解散。イケザワは名古屋に左遷され、鮫島が火浦を守っていくことになりました。
「虎狼の群れ」は加倉と鮫島がありとあらゆる手を使って火浦を守ろうとするストーリーでした。また、鮫島の娘であるハルミの過去がより一層ドラマを引き立たせて、最後までどうなるか分からないハラハラした映画となっています。
人物関係や設定を良く把握してからあらためて「虎狼の群れ」を見ると、また新しい発見があるかもしれません。その時にはぜひ、この記事を参考にしてみてください。