みなさんはヤクザ映画と聞いてどんな作品を思い浮かべるでしょうか。
ひとくちにヤクザ映画といっても、銃撃戦などアクションをメインにしたものからストーリー重視のもの、コメディ路線のものなど、そのバリエーションは多岐にわたります。
この記事では今までに数えきれないほどのヤクザ映画を鑑賞してきた筆者が、ヤクザ映画初心者でも楽しめる本当に面白いヤクザ映画を20本厳選し、みなさんにご紹介していきます。
誰もが知っている有名作から知る人ぞ知るカルト映画まで幅広く網羅しているので、ぜひ参考にしてみてください。
アウトレイジ
一言でいうと
世界のキタノが描く、現代ヤクザの仁義なき戦い
北野武監督による本格ヤクザ映画シリーズです。権謀術数渦巻く容赦のないストーリーはまさに現代版仁義なき戦いと呼ぶに相応しいでしょう。
本シリーズは三作から成っており、監督である北野武が自ら主演を務めている他、小日向文代、加瀬亮、西田敏行、大森南朋など錚々たるキャスト陣が脇を固めています。
それぞれストーリーが密接に繋がっているので、なるべく一作目から順番に鑑賞してくださいね。
仁義の墓場
一言でいうと
破滅の美学、ここに極まれり
実在のヤクザ・石川力夫氏の半生をドラマチックに描いた実録ヤクザ映画です。
「実録路線の極北」と称されるショッキングな内容でありながらキネマ旬報オールタイムベストの日本映画編にランクインするなど、実録路線の中でも特に評価の高い作品のひとつです。
仁義なき戦い
一言でいうと
ヤクザ映画の歴史を変えた、映画史に残る大傑作
実際に起きた暴力団同士の抗争事件「広島抗争」を題材にした実録ヤクザ映画シリーズです。
抗争事件の当事者である美能幸三氏の手記や関係者へのインタビューに基づいて練り上げられた真に迫った内容は当時の映画界に大きな衝撃を与え、東映実録路線という一大ムーブメントを生み出すきっかけとなりました。
本シリーズは5作品で構成されています。
日本統一
一言でいうと
Vシネマ界屈指のエンタメ超大作
大坂に拠点をもつ日本最大の暴力団・侠和会が日本統一に向かって立ち進む様を描いたヤクザ映画シリーズです。
シリーズ累計36本以上の作品が制作されている他、最近では主要キャラクターのスピンオフ作品が制作されるなど、その人気は留まるところを知りません。
女性ファンの間でも人気の高い本宮泰風をはじめ、小沢仁志、山口祥行などキャスト陣も豪華です。現在進行形でもっとも人気の高いヤクザ映画といっても過言ではないでしょう。
孤狼の血
一言でいうと
現代版「県警対組織暴力」
暴対法が成立する直前の広島を舞台に、ヤクザ同士の抗争を阻止しようと奔走する悪徳刑事の姿を描いたヤクザ映画です。
物語自体はフィクションですが「県警対組織暴力」の大きな影響を受けており、本作もまた東映実録路線に連なる作品であるといっても過言ではありません。
主演の役所広司と松坂桃李をはじめ、江口洋介や竹野内豊、真木よう子などヤクザ映画ではお目にかかれない豪華キャストが集結したことでも大きな注目を集めました。
本作は柚月裕子の同名小説を原作としており、既に続編の制作が決定しています。
県警対組織暴力
一言でいうと
警察組織の理想と現実
ヤクザと癒着する悪徳刑事の生き様を描いたヤクザ映画です。
ストーリー自体はオリジナルですが、実話に基づいたエピソードが随所にちりばめられていることから本作を東映実録路線に含める向きもあります。
その非の打ちどころのない洗練されたストーリーは公開当時から脚本家や小説家などクリエイターを中心に高く評価されていましたが、「孤狼の血」の原作者がその影響を公言してからは若い層にも広く知られるようになりました。
実録外伝 大阪電撃作戦
一言でいうと
敗者の視点で描く、三代目山口組の脅威
実際に起きた三代目山口組と愚連隊系暴力団の抗争事件(通称:明友会事件)を題材にした実録映画です。
明友会事件は「山口組外伝 九州進攻作戦」や「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」などさまざまな映画のモデルになっています。
それらの作品のほとんどが抗争の勝者である三代目山口組の視点から描いているなか、本作は敗者である明友会の視点から事件を描いた珍しい作品だといえるでしょう。
難波金融伝・ミナミの帝王
一言でいうと
Vシネ四天王・竹内力の出世作
Vシネマ最大の金融系ヤクザ映画シリーズです。元は同名の漫画を映画化したものですが、今や通算80作を超える人気シリーズに成長し、漫画の知名度を上回るまでになりました。
シリーズをとおしてVシネ四天王のひとりに数えられる竹内力が主人公の金融業者・萬田銀次郎を演じており、本シリーズは竹内力の出世作としても有名です。
闇金ウシジマくん
一言でいうと
カメレオン俳優・山田孝之の真骨頂
同名の漫画作品が原作のアクション映画シリーズです。4部作から成っており、そのすべてで山田孝之が主人公を演じています。
「闇金ウシジマくん Part1」ではAKB48の大島優子が出演するなどキャスティングの面でも大きな注目を集めました。
金融業者をテーマにしたVシネマに「難波金融伝・ミナミの帝王」シリーズがありますが、本シリーズはよりダークでシリアスな作風に仕上がっています。
GONIN
一言でいうと
タランティーノを虜にした傑作バイオレンス・アクション
ヤクザから大金を強奪した5人組の強盗の顛末をスタイリッシュに描いたバイオレンス映画です。
メインキャストである佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平に加え、ビートたけしなど錚々たる面々が脇を固めています。
本作の続編に「GONIN2」があり、最新作である「GONINサーガ」では本作の後日談が描かれているので、ぜひ続けて鑑賞してみてください。
沖縄やくざ戦争
一言でいうと
東映実録路線最大の問題作
第四次沖縄抗争を題材にした実録映画です。
公開当時にはまだ抗争が集結していなかったため、本作が事件の舞台である沖縄で公開されることはありませんでした。
日本におけるヤクザの歴史の中でも特に凄惨な抗争事件を題材にしているにもかかわらず、思わず吹き出してしまうほど可笑しな場面がちりばめられているなど、東映実録路線では異色の作品だといえるでしょう。
日本の首領
一言でいうと
和製「ゴッドファーザー」
日本最大のヤクザ組織・中島組が全国を制覇していく姿を描いたヤクザ映画シリーズです。
中島組々長を演じる佐分利信をはじめ、鶴田浩二、菅原文太、梅宮辰夫、さらには三船敏郎、片岡千恵蔵といった新旧の映画スターたちが夢のような共演を果たしました。
言わずと知れたマフィア映画の名作「ゴッドファーザー」をモチーフ強く意識しており、本シリーズも「やくざ戦争 日本の首領」「日本の首領 野望篇」「日本の首領 完結篇」の三部作から成っています。ストーリーが密接に繋がっているので必ず一作目から順に鑑賞してください。
極道の紋章
一言でいうと
Vシネマの王道をいく人気シリーズ
とある組の若頭に見込まれた中堅組員の成長を描いたヤクザ映画シリーズです。
Vシネマの王道ともいえる堅実な作りと白竜演じる川谷組若頭・津浪の漢気あふれるキャラクターが多くのファンの支持を集めており、本シリーズを白竜の代表作と推す声を少なくありません。
殺し屋1
一言でいうと
浅野忠信の狂気に酔いしれろ!
凄腕の殺し屋に狙われたヤクザの姿を描いたバイオレンス映画で、山本英夫の同名漫画を原作としています。
日本よりも海外からの評価も高く、クエンティン・タランティーノは本作に感銘を受け、自身の映画「キル・ビルVol.1」に本作のキャストである菅田俊と國村準を起用しました。
ハリウッドにも進出し今や世界的な俳優となった浅野忠信がヤクザの組長を演じており、山本英夫のとち狂った原作と三池崇史監督の感性、浅野忠信の存在感が絶妙にマッチして他に類をみない独特なバイオレンス映画に仕上がっています。
ブラックレイン
一言でいうと
松田優作の遺作となったハリウッド製作のヤクザ映画
逃亡した日本のヤクザを追うアメリカの刑事たちの姿を描いたアクション映画です。ハリウッド映画でありながらメインキャストに高倉健と松田優作を起用したことで大きな話題を集めました。
松田優作の狂気じみた演技は日本のみならず海外の映画ファンにも大きな衝撃を与え、本作の監督リドリー・スコットをして「ここ10年で最高の悪役」と言わしめたほどです。
松田優作が末期がんをおして演じた役柄はヤクザ映画史上に残る名キャラクターであるといっても過言ではありません。ぜひ鑑賞してみてください。
北陸代理戦争
一言でいうと
実録路線のスワンソング
福井県を舞台に、実在のヤクザ・川内弘氏の生き様を描いた実録映画です。本作も「沖縄やくざ戦争」と同様に現在進行形の抗争を題材にしていたため、福井県内の劇場では公開されませんでした。
公開後二か月足らずで映画内の場面と同じシチュエーションで川内氏が射殺されるという事件(通称:三国事件)が起きたことから、本作は実録路線の終焉を招いたいわくつきの作品として知られています。
また東映実録路線としては珍しくやくざの世界で生きる女性の逞しさに焦点を当てており、後の「極道の妻たち」シリーズに繋がる萌芽が見てとれます。
制覇
一言でいうと
硬派なVシネマが観たいならこれで決まり
白竜と小沢仁志がW主演を務めるヤクザ映画シリーズです。
2015年に始動した新しい作品でありながら70年代の東映ヤクザ映画を思わせるクラシカルな雰囲気が漂っており、エンタメに寄りがちなシリーズもののVシネマの中でひときわ異彩を放っています。
2019年3月に公開された「制覇20」をもって完結しているので、まだ観たことがないという人はこの機にイッキ見してみてはいかがでしょうか。
DEAD OR ALIVE 犯罪者
一言でいうと
Vシネマ史上最大の問題作
新宿署の刑事と中国残留孤児グループの壮絶な戦いを描いたヤクザ映画です。
監督の三池崇史に加え、哀川翔、竹内力、小沢仁志、石橋蓮司などVシネマ界のオールスターともいうべき豪華キャストが集結しています。「DEAD OR ALIVE 2 逃亡者」「DEAD OR ALIVE FINAL」という二作の続編がありますが、いずれもストーリー上のつながりはありません。
本作のクライマックスシーンは驚愕の一言で、Vシネマやヤクザ映画の枠を超えて後世に語り継がれることは間違いないでしょう。
極道恐怖大劇場 牛頭
一言でいうと
任侠×デヴィッド・リンチ
映画史上最初で最後のヤクザ・ホラー映画です。「デヴィッド・リンチが任侠映画を撮ったら」というコンセプトに違わず、狂気と正気、悪夢と現実がシームレスに入り混じった掴みどころのない作風に仕上がっています。
三池崇史監督の作品のなかでも特に実験的な映画なので決して万人受けはしませんが、ヤクザ映画ファンを自認するのであれば一度は観ておきたい作品です。
また本作はエロ・グロ・ナンセンスの極みともいえる前衛的な作品であるにもかかわらず、第56回カンヌ映画祭に正式出品されました。
静かなるドン
一言でいうと
ドラマ化もされた異色のヤクザ映画
新田たつおの同名漫画を原作としたヤクザ映画・ドラマで、昼は冴えないサラリーマン、夜はヤクザの総長という他のヤクザ映画とは一線を画した異色のキャラクターを主人公としています。
映画やオリジナルビデオの他、テレビドラマなどさまざまな媒体の作品が製作され、中山秀征をはじめ香川照之、袴田吉彦、竹下宏太郎といった錚々たる俳優が主演を務めてきました。
中でも中山秀征が主演を務めたテレビドラマ版は高い評価を得ており、静かなるドン=中山秀征というイメージの人も多いのではないでしょうか。