三池崇史は現代の日本を代表する映画監督です。
キャリアの初期はVシネマを多く扱っており、その外連味あふれる斬新な発想と生々しい暴力描写で多くのヤクザ映画ファンの心を掴みましたが、近年は人気漫画の映像化作品を手掛けて一般の視聴者にも広くアピールするなど、その活躍ぶりはとどまるところを知りません。
この記事では三池崇史がこれまでに監督した膨大なフィルモグラフィの中から、特におすすめの10本を厳選してみなさんにご紹介します。
前半では「人気作品」を、後半は「マニア向け」にVシネマからヒット作品まで掘り下げていきます。ぜひ参考にしてください。
三池作品といえば
クローズZERO
一言でいうと
思春期男子必見! 男の生き様を描いた教科書
熱狂的な人気を誇る不良漫画「クローズ」をオリジナルストーリーで映像化した不良映画です。本作は良い意味で三池崇史とは思えない爽やかな雰囲気のエンターテインメント作品で、原作漫画を知らない人でも楽しめる痛快な娯楽映画に仕上がっています。
小栗旬や山田孝之、桐谷健太、高岡蒼佑など若者の間で人気の高い若手俳優を多数起用していることもあり、世間的にも大きな話題をさらいました。
不良高校を舞台に番長の座を競うという若さとエネルギーに溢れた素晴らしい作品なので、続編「クローズZERO II」と併せてご覧ください。
悪の教典
一言でいうと
三池崇史が描く最凶のサイコパス
ベストセラーとなった貴志祐介の同名小説を映像化したバイオレンス映画です。生徒や同僚たちから信頼の厚い教師が私利私欲のために殺人を重ねるというショッキングな内容は大きな注目を集めました。
本作では珍しく監督自身が脚本を手掛けており、三池崇史が脚本家としても優れた手腕の持ち主であることを存分に知らしめています。
日本映画の限界に挑むような三池監督らしい過激な作品なので、興味を持った方はこの機会にぜひ鑑賞してみることをおすすめします。
土竜の唄
一言でいうと
三池流ヤクザコメディ
「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」とその続編「土竜の唄 香港狂騒曲」はヤクザに潜入する捜査官の活躍を描いた人気コミック「土竜の唄」を映像化したエンターテイメント映画です。
主人公の生田斗真を筆頭に、相棒役の堤真一や山田孝之、ナインティナインの岡村隆史など話題性の強い俳優を起用しているだけでなく、寺島進や的場浩司、織本順吉といったヤクザ映画でお馴染みの面々も多数出演しているので、キャスティングを重視して映画を鑑賞するという方にもおすすめですよ。
バイオレンスとコメディの要素がバランス良く混ざり合った極上のエンタメ作品なので、ぜひ鑑賞してみてください。
神さまの言うとおり
一言でいうと
家族向け!? エンタメ系デスゲーム映画
少年マガジンに連載されている同名のデスゲーム系コミックを映像化したシチュエーション・スリラー映画です。
シチュエーション・スリラーというとかつて一世を風靡しブームの火付け役となった「ソウ」シリーズのようにホラーのサブジャンルというイメージが強いですが、本作はホラーテイストを徹底的に排除し、家族で楽しめるエンタメ大作に仕上がっています。
三池監督のサービス精神が存分に発揮されているので、頭を空っぽにして別世界に浸りたいという気分のときにおすすめです。
初恋
一言でいうと
おれたちの三池崇史が帰ってきた!
「初恋」は三池崇史監督の最新作にして濃厚なバイオレンスが炸裂する異色の恋愛映画です。
近年の三池監督は上でご紹介した「クローズZERO」など原作モノを多く手掛けていましたが、久しぶりの完全オリジナル作品である本作ではVシネマ時代を彷彿とさせる外連味と過激な暴力描写が目白押しとなっており、往年の三池ファンも満足すること間違いなしです。
内野聖陽演じる武闘派ヤクザは迫力充分、ヤクザ映画ファンでも物足りなさを感じることはありません。
マニア向け
ここからは、三池ファンでもある筆者がマニア向けにご紹介します。
新宿アウトロー
一言でいうと
三池崇史の原点
キャリアの最初期に製作したVシネマです。広島抗争の残党が東京・新宿を舞台に敵対のヤクザや台湾マフィアと抗争を繰り広げる様子を描いたヤクザ映画で、主演の渡辺裕之をはじめ、中条きよしやルビー・モレノ、白竜など錚々たる面々が出演しています。
これまでに新宿を舞台にした作品を多く手掛けていますが、その幕開けとなったのが本作です。
多少の古臭さを感じることは否めませんが、三池崇史の魅力がたっぷりと詰まった彼の原点というべき作品なので興味のある方はぜひ鑑賞してみてください。
新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争
一言でいうと
三池監督初期の最高傑作
新宿を根城に悪の限りを尽くすチャイナ・マフィアと、彼らを追う刑事の攻防を描いたVシネマです。上でご紹介した「新宿アウトロー」は三池監督にしては大人しい部類に入りますが、本作には三池監督の変態的な嗜好が色濃く反映されており、Vシネマ界に大きな衝撃を与えると共に三池崇史の監督としての地位を確固たるものに至らしめました。
本作をベストに挙げる三池崇史ファンも少なくないなど今なお根強い人気を誇っている作品なので、まだ観たことがないという方はこの機会に鑑賞してみてはいかがでしょうか。
日本黒社会 LEY LINES
一言でいうと
中国人ハーフの孤独と悲哀を描いた人間ドラマ
中国人ハーフとして生まれた兄弟の生き様を描いた作品で、いかにもVシネマ的なタイトルからは想像もつかない重厚な人間ドラマに仕上がっています。
キャストには主演の北村一輝をはじめ、竹中直人や田口トモロヲ、哀川翔など個性的な俳優陣が名を連ねていることからも、三池監督のファンよりむしろ普段はVシネマをまったく観ないという方におすすめの作品だといえるかもしれません。
もちろん三池監督の持ち味である過激な表現は健在なので、ヤクザ映画ファンのみなさんもぜひ鑑賞してみてください。
荒ぶる魂たち
一言でいうと
三池Vシネマの到達点
「荒ぶる魂たち」はヤクザの権力争いをドラマチックに描いたVシネマです。ストーリー自体はこれといった変哲のない典型的なヤクザ映画のそれですが、武知鎮典の脚本主演である加藤雅也の圧倒的な存在感を三池崇史がまとめあげたことによって見事、Vシネマの歴史に残る大傑作へと昇華しました。
そんな本作ですが、キャストのひとりが重大な犯罪の加害者となったことが原因で動画配信サービスはもちろんDVDも未発売となっているため、残念ながら視聴が困難であるのが現状です。気になる方は海外版のDVDを購入してください。
新・仁義の墓場
一言でいうと
名作ヤクザ映画を三池崇史がリメイク
実在する伝説のヤクザ・石川力夫氏の半生を描いた東映実録路線映画「仁義の墓場」のリメイク作品です。ヤクザ映画界でも随一の厄ネタである石川力夫(本作での役名は石松陸夫)の破滅的な生き様を主演・岸谷五朗が鬼気迫る勢いで演じており、その迫力はオリジナル版で石川力夫を演じた渡哲也に勝るとも劣りません。
単なるリメイクではなく、時代背景を移した上で巧みに換骨奪胎しているので、オリジナル版のファンもそうでない方もぜひ鑑賞してみてください。